~熟年夫婦が旅で気づいた大切なこと~
「夫婦で海外旅行なんて、きっと楽しいことばかり。」
出発前の私は、そんなふうに思っていました。でも、現実は少し違いました。
旅行初日。
午前2時に起きて、まだ真っ暗な中を家を出発。
朝4時のリムジンバスで羽田空港へ向かい、長時間のフライトでイギリスへ。
飛行機の中ではプレミアムエコノミーとはいえ、思うようには眠れません。
現地に着いてからも終わりではありません。
さらに国内線へ乗り継ぎ、ようやくホテルに到着したのは夜10時過ぎ。
体はクタクタ。
頭もぼんやり。
「もう二日くらいまともに寝ていないんじゃない?」
そんな感覚でした。
疲れていると、人は優しくできない
羽田空港で、こんな出来事がありました。
主人から「飲み物を買ってきて。」
と言われたので、私はペットボトルのお茶を買って戻りました。
すると主人が一言。
「薬を飲むから、水に決まってるでしょ。それくらい分からない?」
その瞬間、カチン。
「だったら『飲み物』じゃなくて、『水』って言ってくれたらよかったのに。」
思わず言い返してしまいました。
腹も立ちましたし、悲しい気持ちにもなりました
もちろん、主人が薬を飲む時はいつも水だということを忘れていた私にも落ち度はあります。
でも、その時の私は、そんなことを冷静に考えられる状態ではありませんでした。
今思えば、どちらが悪いという話ではなかったんです。
寝不足と疲れが、ほんの一言を
トゲのある言葉に変えてしまっていた。
夫婦喧嘩というほど大きなものではありません。
でも、こういう小さなすれ違いって、
熟年夫婦には案外よくあることではないでしょうか。
ある朝、窓の外の景色が私の心を変えた
ある朝。ホテルのレストランで朝食をいただいていました。
窓の外には、一面に広がる緑の芝生。

その向こうには、どこまでも続く美しい田園風景。
コーヒーを飲みながら、その景色をぼんやり眺めていると、
不思議なくらい心が落ち着いてきました。
その時、ふと気づいたのです。
「疲れていたのは、私だけじゃない。」
主人だって、私と同じように午前2時に起き、
長時間飛行機に乗り、慣れない海外で
移動を続けてきたのです。
私ばかりが大変だと思っていました。
でも、本当は主人も同じだった。
そのことに気づいた瞬間、
前日の出来事の見え方が変わりました。
見方が変わると、相手も変わって見える
旅が進むにつれて、私の気持ちにも
少しずつ変化が生まれていきました。
重いスーツケースを持ってくれる主人。
慣れない土地でも、さりげなく気を配ってくれる主人。
そして何より、
「こんな遠くまで私を連れてきてくれたんだ。」
そう思った時、不思議なことが起きました。
それまでイライラの原因に見えていた主人の行動が、
一つひとつ「ありがとう」に変わっていったのです。
何か特別なことがあったわけではありません。
主人が急に優しくなったわけでもありません。
変わったのは、私の見方でした。
すると、不思議なことに主人も穏やかになり、
二人の会話も自然と増えていったのです。
相手は変えられない。でも、見方は変えられる
心理学では、
「相手を変えようとするより、自分の受け止め方を変えるほうが、関係は変わりやすい」と言われています。
私はこれまで学びとしてそのことをお伝えしてきましたが、
今回の旅で改めて身をもって実感しました。
疲れている時は、相手の欠点ばかりが目につきます。
でも、心に少し余裕が生まれると、
同じ人の優しさや思いやりが見えてきます。
相手は何も変わっていないのに、
自分の心の状態で見える世界が
こんなにも違うのです。
これは夫婦だけではありません。
親子でも、友人でも、職場でも
同じことが言えるのではないでしょうか。
「最近、あの人にイライラするな。」
そんな時こそ、自分自身が疲れていないか、
一度立ち止まってみる。
そして、「相手も同じように疲れているのかもしれない。」
そんなふうに考えてみるだけで、
人間関係の空気が変わることがあります。
イギリス旅行で見つけた、一番のお土産
今回のイギリス旅行では、
美しい湖や歴史ある街並み、
現地の人との出会いなど、
たくさんの思い出ができました。



でも、私にとって一番の収穫は、世界遺産でも絶景でもありませんでした。
それは、一番近くにいる主人の存在のありがたさに、もう一度気づけたことです。
45年も夫婦をしていると、
いて当たり前、やってくれて当たり前
と思ってしまうことがあります。
でも、その「当たり前」は、
本当は当たり前ではないのですね。
もし、あの日の朝、
あの景色を眺める時間がなかったら…。
私は旅の最後まで、不機嫌なまま
過ごしていたかもしれません。
今回の旅で変わったのは、
景色ではありません。
主人でもありません。
変わったのは、私の心でした。
ほんの少し見方を変えただけで、
人間関係はこんなにも穏やかになる。
人は、自分の心を通して相手を見ている。
心理学では学んでいたことですが、
イギリスの旅で改めて実感しました。
45年連れ添った今でも、新しい気づきがある。
だから人生は面白いし、
夫婦って、まだまだ成長できるもの
なのかもしれません。
イギリスの美しい景色はもちろん忘れられません。
でも私にとって一番のお土産は、
主人への「ありがとう」の気持ちを、
もう一度思い出せたことでした。
最後に
45年連れ添った夫との旅は、
私にたくさんのことを教えてくれました。
そして、それは夫婦のことだけではありません。
次回は、イギリス旅行を振り返りながら、私が受け取った「人生の宝物」についてお話ししたいと思います。

